鬱状態の患者様から「周囲の人から旅行にでも行ってみたらと言われた」とよく耳にしますが、本当に鬱状態に効果があるでしょうか。
鬱状態も様々で、逆効果のこともあるのです。
重度~中等度の鬱状態の場合、枕が替わることで不眠となったり、日頃より運動もあまり出来ていない為体力が落ちていて疲れやすく、とても観光を楽しめないどころか更に気分が落ち込んでしまうことも多いのです。
ご自分でも体力面で不安と思われることが多く、強引に旅行をお勧めしない方が良いでしょう。
では、軽度の鬱状態の場合はどうでしょうか。
そもそも鬱状態は「悪循環の状態」と言えます。
①気分が低下する→悲観的思考が強くなり認知の狭小化(置かれた状態に見合った悲観的状況より悪い状況として認識してしまう)が起こる→更に気分が低下する。
②気分が低下する→倦怠感、不眠、食欲低下等の身体症状が出現する→更に気分が低下する。
軽度の鬱状態の場合、上記の悪循環が少ない状況ですが、家に閉居して悲観的な事や不安な事を考える時間が多いと悪循環の①を活性化して悪循環に再度、陥ってしまいます。又、悪循環が少ないゆえに様々な気分転換も効果的です。
つまり、悲観的な又、不安な思考を一秒でも少なくすることが重要なのです。
この為にも、非現実の世界(現実の苦しい状況から逃れられる世界)に身を投じることが効果的です。
この非現実的な世界への移行の代表が旅行」と言えるのです。
では、どのような旅行が効果的でしょうか。
①疲れやすい旅程は逆効果です。
ゆとりを持って動くことが必要です。
1)歩き回って観光することは最初は気分転換になるのですが、疲労しやすく、倦怠感が強くなると次第に悪循環の②を活性化してしまい鬱状態は悪化します。
2)温泉につかってゆっくりすることは一見、理にかなっているように見えますが、これも疲れやすくなります。元々、鬱状態の方は悲観的な事や不安な事を考えている時間が長く緊張感が高い為、体温が上昇しやすい状態です。
熱いお風呂に長時間入ることは、体温を下げるためのエネルギーを多量に消費するため、控えた方が良いでしょう。
②アルコールも控えた方が安全です。
アルコールは気分をリラックスする作用がありますが、不眠の原因となります。
又、服薬中の患者様は寝ぼけてしまったり、薬の副作用が強く出ることがあり、アルコールとお薬の併用は安全とは言えません。
躁鬱病の患者様は気分の上下が激しく出現し、病状が不安定となりがちです。