子供の視線とそぐわない親の態度は確かに子の客観性の発達を阻害する可能性があるが、これが主たる原因だろうか。
元々、客観性の歪を生じる統合失調症や躁鬱病の児童ではないのか。
診療上では、親の態度が恣意的だから、子が自己否定的に捉えるということが、客観性を阻害する主な原因とは言い難く、親子関係を修正しても摂食障害が改善しないことが多い。
どちらかというと子が元来、客観性の歪を生じる統合失調症や躁鬱病であり、しかも親が理解力や共感性がなかったり、親が統合失調症や躁鬱病等であり親側の客観性の維持が困難な場合に、結果として子供にアンビバレンツな影響を与え易いことはある。
ヒルテブルグの摂食障害の中核症状である自尊心の欠如は親子関係のみで成立するとは認め難い。
統合失調症や双極性における、客観性の低下、欠落こそが中核症状である。
つまり、子供の視線とそぐわない親の態度は子の客観性の発達を阻害することはあっても、これが摂食障害の主たる原因とは言い難い。
これは統合失調症や双極性障害の遺伝が多く、結果、負因のある親と遺伝を受けた子の関係が偶々、摂食障害の主因と考えやすかっただけではないか。
根本的に、統合失調症、双極性障害の患者は悲観的思考、被害的に思考に支配され自己否定的であり、自己主張は苦手である。
ストレスが蓄積しても、外に向かって発散し難く、内側に発散されることが多く、摂食障害もリストカットと同様に自傷行為といえる。
この様な、客観性の低下を認める状況下での親子関係の修正を主とするカウンセリングは、ある程度効果があってもそれは限定的と言える。