チック症について

①チックとは、突発的に体動や発声を反復する行動。
②強迫的衝動を伴うことがあり、強迫性障害との合併を示唆されている。
③チックはADHD,アスペルガー等の発達障害との合併も多いとされる。
④チックは単純或いは複雑、運動或いは音声、暫定或いは持続性によって分類される。

暫定的チック症/暫定的チック障害

A.1種類または多彩な運動チックおよび/または音声チック。
B.チックの持続は最初にチックが始まってから1年未満である。
C.発症は18歳以前である。
D. この障害は、物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。
E. トゥレット症または持続性(慢性)運動または音声チック症の基準を満たしたことがない。

持続性(慢性)運動または音声チック症/持続性(慢性)運動または音声チック障害

A.1種類または多彩な運動チック、または音声チックが病期に存在したことがあるが、運動チックと音声チックの両者がともにみられることはない。
B. チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している。
C.発症は18歳以前である。
D. この障害は、物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。
E. トゥレット症の基準を満たしたことがない。

トゥレット症/トゥレット障害

A.多彩な運動チック、および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が、同時に存在するとは限らないが、疾患のある時期に存在したことがある
B. チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している
C.発症は18歳以前である。
D. この障害は、物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない
上記の3つのほか、チック症に特徴的な症状が優勢であるもののチック症または神経発達症の診断分類の中のどの疾患の基準も完全には満たさない場合に適用される「他の特定されるチック症/他の特定されるチック障害」や「特定不能のチック症/特定不能のチック障害」がある。
「他の特定されるチック症/他の特定されるチック障害」の場合は、臨床家が、その症状がチック症または特定の神経発達症の基準を満たさないという特定の理由(例:「18歳以降の発症」など)を伝える選択をする場合に使用される。
一方の「特定不能のチック症/特定不能のチック障害」は、同じく臨床家が、その理由を特定しないことを選択する場合、また特定の診断を下すのに十分な情報がない状況において使用される。

チック症候群(TS)

①トゥレット症候群(TS)および強迫神経症(TS)は遺伝的関係がある。
②一次親族のOCD(強迫性障害合併)率は、一般人及び養子縁組の対照サンプルの推定値よりも有意に増加した。
Pauls DL、Towbin KE、Leckman JF、Zahner GE、Cohen DJ Arch Gen Psychiatry. Dec198643(12)

チック症・トゥレット症候群と併存障害

トゥレット症候群は、1000人当たりの罹患率が0.1-1.0と言われる。
この症候群は、慢性多発性チック障害または強迫性障害のいずれかを伴い、常染色体優性パターンにおいて遺伝すると言われるが、多因子遺伝の可能性も十分にある。
チック症候群は、強迫症状、注意欠陥多動障害、行動障害、学習障害を伴うことが多い。
シナプス神経伝達(特にドーパミン作動系)を含む病態生理学的機構(ノルエピネフリン、およびコルチコトロピン放出因子の関与等)を示唆されている。

TSと統合失調症

小児発症統合失調症の罹患率はまれである:100,000人につき1〜2例。
 しかし、2歳から12歳のTS患児の統合失調症の有病率は約8.7%である。
さらに、小児発症性統合失調症は、思春期または成人発症の統合失調症よりも多くの合併症、特にADHDおよびOCDと関連している。
この事実は、TS及び関連障害は、発達の重要な期間中に積極的な要因に神経生物学的脆弱性から生じ得ると考えられる。
基底核から辺縁および前頭皮質領域へのドーパミン作動性神経伝達の機能障害は、統合失調症およびTSの両方の生物学的相関であり得る。
TrendsPsychiatryPsychother. vol.36 no.3 PortoAlegre July/Sept. 2014  Epub Aug 12, 2014

TSと統合失調症、強迫性障害

複雑性音声チック(汚言症等)は統合失調症の独言に相当することもある。
強迫性障害自体、統合失調症との関連を示唆されている。
但し、強迫性障害に於ける言葉の繰り返しや、確認行為は、記憶力の低下が原因の場合もある。
ストレス発散としての場合のチックもあり、強迫性障害とチックが完全に同じものとも言い難い。

統合失調症におけるOCSの臨床的関連性

①OCSの存在自体統合失調症による認知機能障害、および陰性症状に対する保護機能として存在していると結論付けている。
②強迫観念が精神病症状に対する防御を構成し、疾患の進行を妨げると仮定出来る。
③これらを否定するような結果があるものの、OCSと統合失調症の併存グループは同様に重度の認知機能障害、や陰性および陽性症状、苦痛、機能不全、絶望、抑鬱症状、自殺念慮、および自殺未遂等の問題を抱えているとされる。
Obsessive-Compulsive Disorder as a Risk Factor for Schizophrenia: A Nationwide Study, doi:10.1001/jamapsychiatry.2014.1011, Sandra M. Meier et al., published in JAMA Psychiatry , 3 September 2014

OCDと統合失調症

①統合失調症患者の23%にOCDを認めた。
②統合失調症スペクトル障害(統合失調症に関連する1つまたは複数の症状を有すると定義されている)を発症した30,556人のうち、700人(2.29%)がOCD診断を先行していた。
③両親がOCDと診断された個人間で統合失調症発症のリスクがさらに高かったことを発見した。
Obsessive-Compulsive Disorder as a Risk Factor for Schizophrenia: A Nationwide Study, doi:10.1001/jamapsychiatry.2014.1011, Sandra M. Meier et al., published in JAMA Psychiatry , 3 September 2014

音声チックの病態生理

音声チックの種類
①単純音声チック
ストレス発散するかのように吠えたり、唸ったり、咳払い様の声を出したり等、文章とはならない発語を繰り返すもの。
②エコラリア(反響言語)
他人の発した言葉を繰り返すもの。
③パリラリア
自分の話した音声や単語を繰り返すもの。
④コプロラリア(汚言症)
汚い言葉を何度も繰り返すもの。

音声チックの精神病理

根本的には、特に意味の無い言葉や単語を繰り返すことである。
これには
①不安(①-1;具体的な不安が存在する場合、①-2;具体的な不安が存在しない或いは、不安がその対象である事柄に相応以上のもの)が基礎にあり繰り返す場合。
②大きな不安があるわけではないが、ストレス発散の為に行う場合。、
③様々な原因で衝動性が高く、衝動的に行う場合。
④思路に障害があり、「保続(思考が渋滞し前に進まない)」として出現する場合。
①-2、④等の場合には、統合失調症、双極性障害のような精神疾患が基礎にあることになる。
幻聴や妄想、妄想着想等に関連する言葉が繰り返されることもある。

音声チックの精神病理

例えば音楽のフレーズを頭の中でリフレインして言葉として発語を繰り返す場合
1)その音楽自体が気持ちよく、敢えて自分の頭の中でリフレインさせている場合(正常範囲)
2)その音楽が長時間に渡ったり、優先するべき思考を阻害してしまう程持続する場合(異常)
3)頭の中でリフレインするだけでなく、その音楽の発生を抑制しようとしても、容易には止まらない場合(異常)
2)3)は思路障害、自我意識障害とも言える。

チック症候群と双極性障害

トゥレット障害を有する小児、青年、および成人の研究グループの間で双極性障害を発症すると推定されるリスクは、偶然予想されるレベルより4倍以上高かった。
トゥーレット障害と双極性障害の合併症は、2つの障害の偶然の同時発生によるものではないようである。 
トゥーレットの障害は基底核神経経路の病的決定因子を持つ双極性障害の様な精神疾患に合併する可能性がある。
重篤な発達障害の存在は、トゥレット症候群および双極性障害の合併症をさらに高める可能性がある。
American Psychiatric Association. All rights reserved.Print ISSN: 0002-953X | Online ISSN: 1535-722

38人の対照グループ患者のうち3人が双極性障害を有し、32人の小児トゥレット症候群患者4人(13%)と39人の小児慢性チック障害患者11人(28%)が双極性障害を有することが判明した。 両極性障害の有病率の差は統計的に有意であった。 
Spencer T, Biederman J, Harding M, Wilens T, Faraone S. The relationship between tic disorders and Tourette’s syndrome revisited

16q22-23領域は、トゥレット症候群および双極性障害の表現型をもたらす一次または変性遺伝因子の候補領域として提案されている。
トゥレット症候群の感受性配列は、総染色体再編成研究によって同定されていないが、細胞遺伝学的に見えない欠失、重複、および逆位を含むトゥレット症候群に関連する染色体再編成は、双極性障害と関連しているようである。
Mehan MR, Freimer NB, Ophoff RA.   Hum Genetics v.l
(5):2004 PMC3525102
A genome-wide survey of segmental duplications that mediate common human genetic variation of chromosomal architecture

強迫性障害との異同

①強迫性障害は、不安に焦点を当てた診断。
チックは発語、行動の繰り返しに焦点を当てた診断。
②強迫性症候群には強迫行為を行うべき明白で不可避な不安が存在するが、チックには表面的や自覚的に不安が必ずしもないことが多い。
③強迫行為は、不安を断ち切ろうとする確認行為であり、チックに於いても無意識に言語化、行動化することによる不安やストレスからの解放を行っている可能性がある。
④強迫性障害、及びチックは反復行動に先行する感覚現象、身体的(触覚的および/または筋骨格および内臓)または精神的(例えば、内的緊張、不完全感)感覚があり、通常それを行った後に消失する。
⑤不安は強迫性障害及びチックを悪化させ、強迫性障害及びチックは不安症状を増加させる。 更に、強迫症状の存在が他の不安障害及びチックの有病率および重症度を増加させる。
⑥統合失調症の様に自我のコントロールが困難になるものの中で、不安のコントロール困難が前面に強く出ると強迫性障害、身体的(発語、発音を含む)コントロール困難なものがチック症候群とも言えるのではないだろうか。

トゥレット症候群の病因論

トゥレット症候群の病因論は議論の余地があり、いくつかの理論が提案されている。
①OCDとの家族性の関連性を有する強力な遺伝的要素がある。 現在の研究は、多面発現(すなわち、慢性運動性麻痺、トゥレット症候群またはOCD)および不完全な浸透を伴う単一の主要な常染色体優性遺伝子を示唆している。 最近の他の研究では、遺伝的要因と環境的因子との間の相互作用や相互作用ではなく、いくつかの遺伝子が示唆されている。
②セロトニン伝達の低下。
③血中トリプトファン濃度の低下。
④過度のドーパミンによるドーパミン調節の異常。中脳 – 中脳辺縁系におけるドーパミンの異常は、辺縁系の脱抑制をもたらすと考えられている。 これは、被殻とレンチキュラー核の対称性の違いによって支えられています。 さらに、ドーパミンD2受容体アンタゴニストはいくつかの症状を緩和する。
⑤前頭葉の異常な放電。
⑥連鎖球菌感染を繰り返した。
⑦出生前および周産期の障害。
⑧皮質の薄化および尾状核のサイズの減少。 

そのほか
躁鬱(そううつ)病について
鬱病について
パニック障害について
統合失調症(自明性の喪失)について
不眠について
社会不安障害について
生理前症候群について
多重人格障害について
強迫性障害について
気分障害について
いじめ対策について
チック症について
摂食障害について
不登校と家庭内暴力
発達障害について
ご予約
アクセス
上部へ
メニュー